使用者賠償責任補償 – 従業員と企業を守るための備え

なぜいま企業に使用者賠償責任が求められているのか

近年、「安全配慮義務違反」を理由に企業が多額の損害賠償請求を受けるケースが増加しています。
政府労災保険は最低限の補償のみで、遺族の生活費や逸失利益など“民事賠償分”まではカバーできません。
さらに、労災事故は示談で終わらず訴訟に発展しやすい傾向が強く、命令通り短期間で高額賠償を支払えなければ差し押さえ・経営破綻のリスクさえあります。
企業が守るべき対象が拡大しているいま、自社の補償内容を確認することは経営リスク管理そのものです。

使用者賠償責任のイメージ1

使用者賠償責任とは?

使用者賠償責任の定義

従業員が業務中の事故で死亡・後遺障害を負った場合、遺族や本人から「安全配慮義務違反」として損害賠償を求められることを指します。

補償が必要な理由

国の労災保険では、一時金や遺族年金が支払われます。

  • 一時金:360万円(遺族補償一時金)
  • 遺族年金:最低限の生活補償レベル

ただし、これだけで遺族側は生活が維持できないため、「不足分」を企業へ請求します。

補償比較表
補償比較表

「安全配慮義務」明文化による企業の負担増加

平成20年の労働契約法第5条により、安全配慮義務は次のように明文化されました。

「使用者は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をしなければならない」

つまり、従業員・協力会社・派遣社員・現場作業員すべてに対して、企業には“常時安全を確保する義務”があることになります。
地震など不可抗力に見える事例でも、「避難指導が不適切」と訴えられるケースが現実にあります。

実際に起こった高額賠償事例

① アスベスト集団訴訟
アスベストによる健康被害をめぐり、京都地裁はメーカー5社に対して原告36人の請求を認め、総額2億円超の賠償を命じました。
1人あたりに換算すると、600万円〜1,000万円以上の支払いが発生しており、企業の長期的な安全対策の不足が重く評価された典型例です。

【ポイント】

  • 長期間の曝露リスクに対する企業の管理体制が問われた
  • 裁判所は「予見可能性」「安全確保措置の有無」を厳しく判断

② サービス業の過重労働
サービス業従業員が過重労働により脳梗塞を発症し、高度後遺障害が残った事案。
ご家族は企業に対して2億6,700万円を請求(内訳:逸失利益、将来介護費、慰謝料など)し、最終的に1億5,000万円で和解となりました。

【ポイント】

  • サービス業の「長時間労働リスク」が顕著
  • 若年層の障害は「将来の逸失利益」が極めて高額になる
  • 労災認定後でも企業への民事賠償請求は別途行われる典型例

③ 現場事故による重度後遺障害
現場作業中の事故により従業員が後遺障害3級に認定されたケース。
会社側との協議の結果、企業側が1億4,000万円の示談金を支払うことで解決しています。

【ポイント】

  • 高度後遺障害は逸失利益・介護費で1億円超に到達しやすい
  • 安全管理体制の立証責任が会社側に重くのしかかる
  • 労災保険では埋まらない損害が大きく、企業に直接請求される

裁判になるとどうなる?

● 支払い命令は「◯日以内に支払え」と明記されることもある
→ 過去の事例では判決確定後10日以内の支払い命令が出たケースも。

● 期限までに払えないと…

  • 口座・売掛金の差し押さえ
  • 取引先の信用低下
  • 最悪の場合、経営破綻

1億円以上の現金を即時で支払える中小企業はほぼありません。

裁判の流れ(フローチャート)
裁判の流れ(フローチャート)

「うちは関係ない」は危険 – 意外なリスクも

多くの経営者は「うちは工場や現場作業をしていないから大丈夫」と考えがちですが、実際にはどの企業でも使用者賠償リスクは存在します。

オフィス勤務でも訴えられる典型的なケース

① 大規模地震や火災などの自然災害

  • 地震発生時、社員がオフィスで怪我や死亡
  • 避難誘導や安全教育が不十分だったとして、企業側に「安全配慮義務違反」を問われる
  • 裁判例でも建物の避難誘導・防災訓練の不備が原因で企業が損害賠償を命じられた事例あり

② オフィス内での事故

  • 通路での転倒や重い荷物の落下によるケガ
  • 社員から損害賠償請求されるケースも発生

③ 在宅勤務中の事故

  • テレワーク中に社員が仕事で負傷
  • 「業務中の事故」と認定されると使用者責任が問われる可能性あり

【ポイント】

  • 「屋外作業だけがリスク」とは限らない
  • 災害時、オフィス、在宅勤務など あらゆる勤務形態で事故は起こり得る
  • 安全配慮義務の範囲は広く、管理体制・教育・環境整備が不十分だと訴えられる
使用者賠償責任のイメージ2

労災訴訟は“安価で提訴できる”ため急増

最近の傾向として、労災事故に関する訴訟は急速に件数が増加しています。
背景には従業員側が低い負担で訴訟に踏み切れる環境が整ってきた点があります。

  • 労災申請後の延長でスムーズに訴訟へ移行できる
  • SNSや相談窓口の発達で、「不足分は会社に請求できる」という知識が広まった

その結果、規模に関わらず、中小企業が訴訟リスクに巻き込まれる可能性が急増しています。
補償の見直しは待ったなしの状況です。

労働関係⺠事通常訴訟事件と労働審判事件(新受件数 地⽅裁判所)
裁判の流れ(フローチャート)

出典:最高裁判所事務総局行政局「労働関係民事・行政事件の概況」(法曹会『法曹時報』)
注1:2024年は速報値。
注2:労働審判制度は、個別労働紛争について、裁判所において労働審判委員会が審理し、適宜調停を試み、調停がまとまらなければ、事案の実情に応じた解決をするための判断(労働審判)を行う制度。2006年4月に始まったもので、同年の労働審判事件数は4月から12月までのもの。

使用者賠償責任補償に加入済みの企業が注意すべきポイント

使用者賠償責任はどの企業にも起こりえます。
ときには賠償額が数千万円〜数億円に到達することもあり、使用者賠償責任の補償内容と金額を必ず確認することが重要です。

【ポイント】

  • 補償が「死亡のみ」になっていないか→後遺障害は賠償額が特に高い
  • 補償金額が「5,000万」や「1億」で止まっていないか→過去の裁判では賠償額1億〜3億円が珍しくない

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